コロナとロックダウン

世界中でまた新型コロナウイルスの感染者が増え始めています。カリフォルニア州では、コロナ感染者数によって最悪のパープルからレッド、オレンジ、イエローと各郡の状態を色分けしているのですが、私の住むコントラコスタ郡(イーストベイ)も最悪の「Purple」段階に戻ってしまいました。そして、午前5時から午後10時まで外出禁止令も出されました。(夜にバーで飲んでいる人たちが感染を広げているということなのでしょうか…?)せっかく数週間前オレンジまで回復したのに、またロックダウン状態になってしまい、がっかりですが、人々はロックダウンに疲れを覚えているのでしょう、感染者が再び増え始めた後も、大型スーパーに行ったら駐車場はほぼ満車で、店舗内も人がいっぱいでした。屋内でのダイニングが禁止され、近くの町ではレストラン街の車道に屋外ダイニング用のテントを張り、食事席を設けているのですが、この寒空の中、多くの人が野外席で食事をしています。

このロックダウンによって、世界の時間はストップしたかのようです。少なくとも、私と娘の時間はストップしています。ロックダウンで多くの人が精神的に不安定になっている今、セラピストはどこも大忙しのようで、受け入れてくれる人を探すのは大変ですし、診断専門のクリニックもコロナのために閉鎖されて再開の目処は立っていないとか、「6−8カ月待ち」とか言われます。「EMDR」というトラウマに効く新たな治療法も試してみたいのですが、それには対面式でないと無理なようで、その目処も全く立っていません。それでなくても広場恐怖症があって外に出るのが大変な娘ですが、パンデミックが始まってからますますアパートから出る機会がなくなってしまいました。今は犬の散歩が唯一の外出です。毎日判で押したような日が続き、私自身、時々昨日何をしたかも忘れてしまうくらいです。ただ、私の場合は翻訳という仕事があり、仕事を通じてかろうじて外の世界とつながっていられることが心の支えになっている気がします。また、10月には全米翻訳者協会の年次バーチャル会議に参加できました。ふつうの会議だったら参加できなかったところ、バーチャルだからこそ参加できたことはありがたかったと思っています。

アメリカでは来週はサンクスギビングで、私と娘は二人きりですし、もともと何も予定はないのですが、通常は10人以上家族が集って七面鳥を食べるオレゴン州の夫の家族も今年はロックダウンで何もしないそうです。おそらくクリスマスもそうでしょう。鬱や不安障害があるとホリデーシーズンというのは苦痛で、介護者の私も早く終わってほしいと思うのが常なのですが、今年はホリデーシーズンそのものがキャンセルされそうな雰囲気です。

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2020年のサンクスギビング、七面鳥の消費量が減れば七面鳥にはラッキーだったかも。私のアパートの駐車場で野生の七面鳥を見かけてびっくり。

 

 

 

 

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アメリカの健康保険

 日本の友人たちと話していて、いつも羨ましく思うのが、日本の健康保険です。アメリカではいつも国民皆保険ということが選挙の争点になり、オバマ大統領の時にはいわゆる「オバマケア」が導入されて公的保険の方向に近づいたのですが、それがかえってオバマケアの資格がない人々(中〜高所得者)の民間保険料の高騰を招き、多くのアメリカ人が不満を抱える結果となってしまったようです。オバマケアは政府が補助する民間の保険に入れる制度で、所得が一定基準を下回ると保険料が安くなるのです。けれども一定基準以上の所得では適用されず、かえって保険料が大幅に高騰しました。ちなみに私はオバマケア適用外の民間の保険をかけているのですが、控除額が高額で、年1回の健康診断は無料ですがそれ以外の診療は年間70万円まで自己負担という厳しいものでも毎月7万円ほどの保険料です。多少税金控除はあるものの、毎月大変な負担です。しかも医療費は高額なので、ちょっとやそっとの病気では医者に行くことはありません。オバマケアに対するもう1つの大きな不満は、健康保険に入らない人には罰金が課されるということだったのですが、それがトランプ大統領になってから廃止され、健康保険に入らない選択肢も選べるようになりました。これだけ保険料が高額だと、健康に自信がある人は入らないという選択をすることもやむを得ないかもしれません。

 オバマケアは、低いとはいってもある程度所得がある人のためのものですが、私の娘のように働くことができない全くの低所得者には、カリフォルニア州では公的保険のMedi-Calがあります。これは保険料も無料ですし、指定の病院に行けば医療費も自己負担はありません。けれども、この「指定の」というところが問題で、Medi-Calの保険を受け入れてくれる医者も、病院も、セラピストも(まとめて「プロバイダー」と呼んでいます)非常に限られているのです。Medi-Calがプロバイダーに支払う金額はふつうの金額に比べて低いために、Medi-Calを受け入れようとするプロバイダーは多くありません。たとえ「指定プロバイダー」のリストに入っていてもいざ電話してみると「Medi-Calは受け入れていません」と何度も言われました。セラピストを探そうと指定プロバイダー数人に電話してみても電話を返してくれないか、「新規患者さんは受け入れていません」と言われるかです。特に今は新型コロナウイルスによるロックダウンが長引き、多くの人がメンタルな問題を抱えているようで、普通以上にセラピストは忙しいのだそうです。そして無視されるか断られるたびに、本人はどんどん落ち込んでいきます。しかしようやく今回、診療予約をできそうなところまでこぎつけました。医師免許のあるメディカル・ドクターでなく、ナース・プラクティショナーという医師と看護師の中間にあるような、医師の指示のもと診療を行い、処方もしてくれる人が見つかったのです。予約がとれるのは一番早くて10日後ということですが、とりあえずほっとしています。

 国民全員が公的保険でその日に診療を受けることができる日本の制度はなんとも羨ましく、先進国はこうあるべきではないか、と思わざるをえません。日本の場合は憲法第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあり、健康で文化的な生活が国民の「権利」であると定められています。これを「生存権」というらしいのですが、合衆国憲法にそのような定めはありません。アメリカにも生活保護や公的保険など低所得者のための救済策は一応あるのですが、今回公的保険でプロバイダー探しに苦労してみて、暗澹たる気持ちになりました。

 国民皆保険にアメリカ人が反対する理由は何だろうと考えるのですが、それはやはり、巨額の予算をどこからもってくるのかということもあるでしょうが、会社がスポンサーとなって充実した民間の健康保険を享受している会社員の人たちが「公的保険になったら医療の質がひどいことになる」と恐れているのではないか、と思います。(会社員の場合は企業が保険料の大半を支払うため、保険料はそれほどかかりません。給料が低くても健康保険がつくなら正社員の職を探したい、という人も多くいます。)しかし国民皆保険の日本の医療の質は決して低くありません。日本の健康保険制度は世界に誇れるのではないか、と考えます。 

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200ページもあるプロバイダーのリストですが・・・。

 

サポートグループ

 以前のブログで書いたのですが、アメリカには精神疾患を持つ当事者と家族を支援するNAMI(全米精神障害者家族連合)という非営利団体があります。ボランティアによって様々な活動を行っているのですが、その一つ、サポートグループに初めて参加してみました。新型コロナウイルスのせいでミーティングはすべてZOOMを使った電話会議です。

 今日は男性3人と私も含め女性2人という合計5人の小さな集まりでした。まずは司会を務める女性が、「ガイドライン」を読み上げます。新型コロナウイルスのロックダウンに加えてカリフォルニアの山火事もあり、娘の調子が悪くなってかなりめげていた私の心に響いたこの言葉、インターネットに載っていたのでここに書き留めておきます。長年精神疾患と戦ってきた多くの人たちの思いがこれらの言葉に凝縮されているような気がしたのです。

  • We will see the individual first, not the illness (私達は病気でなく、個人をまず見つめます)
  • We recognize that mental illnesses are medical illnesses that may have environmental triggers(精神疾患は、環境が一因となりうる、医学的疾患であることを認識します)
  • We understand that mental illnesses are traumatic events(精神疾患はトラウマ的な出来事であることを理解します)
  • We aim for better coping skills(よりよい対処能力を身につけるよう努力します)
  • We find strength in sharing experiences(経験を分かち合うことで強くなれるのだと考えます)
  • We reject stigma in ourselves and others (自分自身に対しても、他人に対してもスティグマは拒否します)
  • We won’t judge anyone’s pain as less than our own(他人の痛みにも自分の痛み同様理解を示します)
  • We forgive ourselves and reject guilt(自分自身を許し、罪悪感を拒否します)
  • We embrace humor as healthy(ユーモアを健康なものとして尊重します)
  • We accept we cannot resolve all problems(すべての問題を解決することは無理であることを受け入れます)
  • We expect a better future in a realistic way(現実的に、よりよい未来を考えます)
  • We will never give up hope!(決して希望を捨てません!)

https://namiaurora.org/wp-content/uploads/2015/03/NAMI-Family-Support-Group-Handout.pdf

 この「経験を分かち合うことで強くなる」ための1つの方法がサポートグループのミーティングなのでしょう。私が参加したのは実はpeer-to-peerといって、精神疾患を患っている人たちが週に1回集まって1時間半、話をするものです。本日集まった人たちは、双極性障害、PTSDとうつ病、パニック障害の人たちでした。

 ミーティングではまず、一人ひとりが極度のうつ状態を1,躁状態を10とする尺度(「ムードスケール」)を使って自分の今日の状態を伝えます。そして「何かシェアしたいことはありますか?」と司会者に聞かれ、一人ずつ自分の現在の状況を話し、その後他の参加者がポジティブなフィードバックを提供します。話したくなければ聞くだけでも構いません。フィードバックは「気持ちわかるよ」という理解を示すだけでもよいのです。病気で職を失って、保険のことや色々な手続きをしなくてはならない、でもそれがなかなかできなくて延ばし延ばしにしてしまう、「とにかく自分に鞭打ってやるべきことはやらなくては、とはわかっているのだけれど」という話をした人には、「わかるよ、他の人には簡単に見えることでも、鬱のときはものすごい大変な仕事に思えるよね」とか「鞭打たなくていいんだよ」とか、実際に経験した人ならではの理解を示すことが、お互いの心の支えになるのでしょう。特に新型コロナで人々が孤立感に苛まれている今、人とのつながり自体が回復に必要な気がします。また、私は介護者の立場で参加したのですが、公的保険で診てもらえるお勧めのセラピストを教えてもらったり、情報を得るという意味でも有意義な集まりとなりました。

 

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カリフォルニアの赤い空

 今朝起きると外が暗く、空は赤く濁っていました。10時現在もまだその状況は変わっておらず、一体どうなっちゃったんだろうと心が騒ぎました。外に出てみると車には灰が降り積もっています。ここ2週間ほどカリフォルニア州では記録的な山火事が発生して大気汚染がひどかったのですが、ここにきて海から強い風が吹き、私の住んでいるベイエリアより北部で発生している山火事が悪化して、風によって灰がこちらに運ばれてきたのだそうです。強い風によって灰が上空にとどまり、それが太陽の光を遮って、夕焼けのように赤い光だけが届くために赤い空になったようです。別の惑星にでもきたかのような恐ろしい空ですが、そのうち晴れることを自分に言い聞かせて、ふだんどおりの生活をするしかありません。

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カリフォルニア州の山火事

 ここベイエリアでは1-2週間ほど猛暑が続いた後の落雷で山火事があちこちで発生して、大気汚染は中国やインドを上回る状態になりました。カリフォルニア州では毎年のように山火事が発生して大気汚染の原因となっています。2018年には史上最大の山火事が発生したばかりなのですが、私がベイエリアにきてから「記録的」山火事が毎年のように発生しており、これからも毎年「記録的な山火事シーズン」がやってくる気がします。コロナ禍のさなかに山火事で空気が濁り、朝犬の散歩に出ても空は茶色、太陽は不気味なオレンジ色で、なんとも重苦しい気持ちになりました。1週間経ってようやく空気の質は有害なレベルを脱したものの、大気汚染は続いています。

 ところで今まで知らなかったのですが、カリフォルニアの山火事と戦う消防士の中で、「囚人消防士」が重要な役割を果たしているのだそうです(Pandemic sidelines more than 1,000 incarcerated wildfire fighters in California)。彼らは減刑や多少の時給(200円〜500円程度)と引き換えに命がけの仕事をしているわけで、いくら受刑者とはいえ、もう少し報酬があってもよいような気がします。

 それにしてもこんな低い時給で消防活動とは、これは奴隷労働ではないか、と思っていたら、まさにその疑問に答えてくれる映画がありました。ネットフリックスの「13th(憲法修正第13条)」という映画です。1865年に批准されたこの米国憲法修正条項は奴隷制廃止を制度として確立するためのものなのですが、実は「except as a punishment for crime whereof the party shall have been duly convicted(正当に有罪判決を受けた者の罪に対する懲罰としての奴隷労働は除く)」という条件付きなのです。奴隷制度は法律上廃止されたものの、今も多くの黒人が不当に長期の禁固刑を受けて実は奴隷労働させられている、というのがこの映画のメッセージでした。BLM(ブラック・ライブズ・マター)が今全米を揺るがしていますが、目に見えにくいところで根強い人種差別が今も続いていて、その不満が爆発しているように思えます。囚人はもちろん黒人だけではないのですが、その比率は理不尽に黒人に偏っています。例えば大麻を使う比率は白人も黒人も同じなのに黒人の逮捕率は3.7倍だそうです。大麻所持は多くの州で合法化されているのに、大麻所持で実刑判決を受け、奴隷労働をさせられているのであれば人権侵害としか思えません。

 ちなみに前述の囚人消防士の記事によれば、囚人消防士を使うことでカリフォルニア州は毎年9000万ドル〜1億ドル(約100億円)を節約できているそうで、それもなんだか搾取のような気がします。しかも、せっかく消防士として訓練を受け、実際に消火活動に参加して経験を積んでも、刑務所を出てから消防士になれるかというと、重罪を一度犯していた場合は10年間資格がなく、二度以上だと永久に資格がないのだそうです。今年は刑務所がコロナのクラスターになったりして囚人消防士が不足しているとのことで、これからも山火事がなくなるとは思えないカリフォルニアは、この制度を見直すべきであるように思えます。

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濁った空に見える太陽は不気味なオレンジ色。

 

精神疾患は「心の病」か?

 「Mental Illness」は「精神疾患」「心の病気」という意味ですが、これらを「マインド」、すなわち「心」や「精神」から発する病気であるとする前提を見直す必要があるのではないかと近頃思うようになりました。また、英語で「He is mental」というと、「彼は頭がおかしい」という侮蔑的な意味で使われ、「mental」という言葉自体が偏見を生むように思えます。また、近頃ではポリティカリー・コレクトな言い方として「behavioral disorder(行動障害)」が好んで使われるようです。しかし「mental illness」あるいは「behavioral disorder」とひとくくりにされている病気も体の中の1つの臓器である脳、または神経の病気です。だから、「心のもちよう」とか、「病は気から」といった、そんなレベルではなくて、胃腸や心臓の病気と同じように何が原因なのか突き止めるところから始めるべきだと思うのです。そして、病気は人を選びません。精神が弱いからうつ病になるとか、そんなことはないのです。

 ところで、学会でも「psychiatric disorder(精神疾患)」と「neurological disorder(脳神経疾患)」を一つにすべきではないかという議論があるようです(「A Neurology and Psychiatry Merger: Quest for the Inevitable?」【英語】)。現在米国で、精神疾患に分類されるのはうつ病、統合失調症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、自閉症などで、脳神経疾患に分類されるのはてんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS)などです。上記の記事によれば、もともとは脳神経疾患という1つの分野だったのが、1930年代ころから精神疾患と脳神経疾患に分かれだし、一説によればそれはフロイトの影響とか。大雑把にいえば症状の原因を科学的に明らかにできないものが精神疾患にされているようですが、どちらも脳神経がかかわってくるので、境界はあいまいであるとしか思えません。例えば、パーキンソン病は昔は「精神疾患」とされていたのが、病気が解明されて治療法が確立された結果、今では「脳神経疾患」とされているのだそうです。(参考サイト【英語】)。

 そんなことを考えていたら、アメリカ国立精神衛生研究所の所長を務めるトーマス・インセル氏によるTEDトーク「精神疾患の新たな理解に向けて」という動画を見つけました。インセル博士も「Mental Illness」とか「behavioral disorder」という言葉が治療の進歩を妨げている、「脳の疾患」として考え直す必要があるとおっしゃっています。この20-30年で医学は大きく進歩し、例えば小児がんなら死亡率は昔は95%だったのが85%も低下し、心臓病の死亡率は63%低下、エイズでも長生きできるようになりました。どれも劇的な改善です。ところが、米国における自殺による死亡数はかえって増えています。そして自殺者の90%は精神疾患を患っている人たちなのだそうです。なぜ、精神疾患に関する治療がこれほど遅れているのでしょうか?がんや心臓病など身体の病気治療にとって重要なのは「早期発見・早期介入」です。精神疾患も「早期発見・早期介入」ができるようになるには脳の働きや異常を解明することが必要ですが、脳機能についてはようやく分かりかけてきたところなのだそうです。医学の飛躍的な進歩をもたらした人間の脳ですが、脳自体の解明ができていないというのはなんとも皮肉な話です。ただ、インセル博士によれば、今では技術の進歩によって精神疾患の症状が出る前に脳の変化を検出することができるようになってきたそうで、もしかしたら脳機能の解明による「早期発見・早期介入」が近々可能になるかもしれません。そして、今「精神疾患」とされている病気の原因がもっと明らかになれば、「脳神経疾患」との境界はなくなるのではないかと考えます。そしてそれは、社会的にも病気への理解が深まり、偏見が減ることにもつながるのではないか、とも。

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ペットの病気とOCD

娘がセロトニン症候群で救急に運ばれて数日後に今度はうちの柴犬リキが救急に行く騒動がありました。夕方から6回ほど嘔吐を繰り返したのです。夜中に救急センターに電話した後、様子を見ることにして、未明には止まりました。翌朝、リキ自身は元気があるようにみえたものの、再び獣医に電話したところ、「6回も吐くのはおかしい。すぐに救急に連れていくように」と言われたのです。OCDがある娘はそれを聞いただけでほぼパニック状態になりました。獣医に救急に連れて行けと言われてしまった以上、行かないわけにもいかず、犬猫救急病院へ行きました。リキに万一のことがあったら、リキをエモーショナル・サポート・アニマルとして頼りにしている娘がどうにかなってしまうのではないかという心配も私にはあったのです。

こちらはコロナウイルスのせいで、犬猫病院に行っても飼い主は中に入れず、玄関口でペットをスタッフに頼んで、飼い主は駐車場の車の中で待機です。娘の頭の中は、リキが大好きでよくかじっていたプラスチック製の骨の切れ端がお腹の中に刺さっているのではないかという心配が渦を巻いていたようです。では、超音波検査をしてみましょう、ということになり、それがなんと900ドル!値段を聞いただけでまた娘はパニックになったのですが、検査をしない限り大丈夫かどうかわからないと言われれば、全財産をなげうっても、という気持ちになったのでしょう、お願いすることになりました。無職の娘はほぼ貯金を使い果たすことになりました。結局超音波のためにお腹の毛を剃られ、洗濯で縮んでしまったセーターを着ているかのような格好にされたリキですが、何も異常はみつからず、今は元気です。

どこが痛いとかを口にすることができないペットの検査や治療をするかどうかの判断はそれでなくても難しいものですが、OCDがあればそれはさらに難しいような気がします。どんどん悪い方へと考えがネガティブになって、最悪の事態ばかり想定してしまい、自分を責めてしまうからです。実は去年の11月にも、リキを救急に連れていく騒ぎがありました。散歩途中に蛇が出てきて、リキが飛び跳ねて叫び(柴犬は叫ぶ傾向があるようです)、娘はリキが蛇に咬まれた、毒蛇だったら死んでしまう、とパニックになったのです。リキ自身はキョトンとした顔で、もう蛇のことは忘れてしまったかのよう、怪我をした様子もないし、動揺する娘に私は「たいしたことないから落ち着きなさい」と言いました。その時の私の対応が意に介さない態度に映り、子供の頃、頭を何針か縫う怪我をしたときや、鼻の骨にヒビが入っていたらしいことが後で判明したのですが、その時も私と夫が医者につれていくことを渋ったときのことなど、昔の心の傷が蘇って精神的に不安定だった娘は最悪のパニックに陥りました。結局娘を落ち着けるためにリキを救急に連れて行ったのですが、娘は車の中で震えるばかりでした。

今回は、あくまでもリキの飼い主は娘であることを尊重して、なるべく娘に任せることにしました。おしよせる不安感と戦いつつも心を落ち着けてとりあえず様子を見、翌朝獣医に電話をし、話をし、検査をするかどうかを判断したのはすべて娘です。そして、私が娘の心配を言下に否定せず、落ち着いてそばにいたことを娘から感謝されました。娘も私も去年の出来事から教訓を得て少し成長したのかもしれません。私も近頃は娘のパニック発作が起きてもうろたえず、「大丈夫。一時的なものだから」と心静かにそばにいてあげるだけです。そして、発作の間も私の平静心が伝わるそうで、薬を使わなくてもパニック発作が次第に収まるようになってきたそうです。今回の騒ぎでは娘の貯金はなくなり、リキも毛を剃られて可愛そうな格好にされてしまいましたが、大事に至らず、二人がお互いに去年からの進歩を確認できる体験だったように思います。

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900ドルのグルーミングといえなくもない。。。



 

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