カリフォルニア州の山火事

 ここベイエリアでは1-2週間ほど猛暑が続いた後の落雷で山火事があちこちで発生して、大気汚染は中国やインドを上回る状態になりました。カリフォルニア州では毎年のように山火事が発生して大気汚染の原因となっています。2018年には史上最大の山火事が発生したばかりなのですが、私がベイエリアにきてから「記録的」山火事が毎年のように発生しており、これからも毎年「記録的な山火事シーズン」がやってくる気がします。コロナ禍のさなかに山火事で空気が濁り、朝犬の散歩に出ても空は茶色、太陽は不気味なオレンジ色で、なんとも重苦しい気持ちになりました。1週間経ってようやく空気の質は有害なレベルを脱したものの、大気汚染は続いています。

 ところで今まで知らなかったのですが、カリフォルニアの山火事と戦う消防士の中で、「囚人消防士」が重要な役割を果たしているのだそうです(Pandemic sidelines more than 1,000 incarcerated wildfire fighters in California)。彼らは減刑や多少の時給(200円〜500円程度)と引き換えに命がけの仕事をしているわけで、いくら受刑者とはいえ、もう少し報酬があってもよいような気がします。

 それにしてもこんな低い時給で消防活動とは、これは奴隷労働ではないか、と思っていたら、まさにその疑問に答えてくれる映画がありました。ネットフリックスの「13th(憲法修正第13条)」という映画です。1865年に批准されたこの米国憲法修正条項は奴隷制廃止を制度として確立するためのものなのですが、実は「except as a punishment for crime whereof the party shall have been duly convicted(正当に有罪判決を受けた者の罪に対する懲罰としての奴隷労働は除く)」という条件付きなのです。奴隷制度は法律上廃止されたものの、今も多くの黒人が不当に長期の禁固刑を受けて実は奴隷労働させられている、というのがこの映画のメッセージでした。BLM(ブラック・ライブズ・マター)が今全米を揺るがしていますが、目に見えにくいところで根強い人種差別が今も続いていて、その不満が爆発しているように思えます。囚人はもちろん黒人だけではないのですが、その比率は理不尽に黒人に偏っています。例えば大麻を使う比率は白人も黒人も同じなのに黒人の逮捕率は3.7倍だそうです。大麻所持は多くの州で合法化されているのに、大麻所持で実刑判決を受け、奴隷労働をさせられているのであれば人権侵害としか思えません。

 ちなみに前述の囚人消防士の記事によれば、囚人消防士を使うことでカリフォルニア州は毎年9000万ドル〜1億ドル(約100億円)を節約できているそうで、それもなんだか搾取のような気がします。しかも、せっかく消防士として訓練を受け、実際に消火活動に参加して経験を積んでも、刑務所を出てから消防士になれるかというと、重罪を一度犯していた場合は10年間資格がなく、二度以上だと永久に資格がないのだそうです。今年は刑務所がコロナのクラスターになったりして囚人消防士が不足しているとのことで、これからも山火事がなくなるとは思えないカリフォルニアは、この制度を見直すべきであるように思えます。

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濁った空に見える太陽は不気味なオレンジ色。