『躁うつ病を生きる』

 1995年の本ですが、『An Unquiet Mind』(邦題:『躁うつ病を生きる―わたしはこの残酷で魅惑的な病気を愛せるか?』という本を読みました。著者は躁うつ病を患い、自殺未遂までしながらジョンズ・ホプキンス大学医学部の教授となり、躁うつ病の治療研究をしているケイ・レッドフィールド・ジャミソンという女性です。躁状態とうつ状態を繰り返しつつ、躁うつ病がわかれば恋人が去っていくのではないか、大学での地位を追われるのではないかという恐怖を抱きつつも、恋もし、すばらしい夫に恵まれ、躁うつ病治療の権威となるまでに上り詰めました。彼女の場合は、家族・恋人・夫にしてもUCLAやジョンズ・ホプキンズ大学の同僚にしてもとても理解があり、そうした人々に支えられたからこそ、そこまでできたのであろうとは思うのですが、それでもその苦悩は計り知れず、人生をとことん生きている姿に心を打たれます。そして一番心に残ったのは、躁うつ病を持つかどうか選ぶことができるとしたら、(症状を抑えられる治療法がある限り、という条件付きですが)躁うつ病を持つことを選ぶだろう、と言っていることです。彼女は、自分が躁うつ病であるからこそ、人生を色濃く生きてきたと言います。激しい恋をし、物事を人一倍強く感じ、経験はより深く心に刻まれる。死にたいと思ったことはあっても、生まれてこなければよかったと思ったことはない、命を授かったことを感謝している、と。それで、邦題には「魅惑的な病気」となっているのだな、と納得しました。そんなふうに思える彼女は幸運な境遇なのかもしれません。けれども、躁うつ病や統合失調症と芸術的創造性との遺伝的な関連性について、科学的な研究も行われているようで、彼女が言うように、躁うつ病の遺伝子がなくなったら世界はもっと色あせてしまうのかもしれません。

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