スティミング(自己刺激行動)

私の娘は3年前に仕事に行けなくなり、一時はバイトをしたりしましたが、一人でふつうの生活ができなくなり、今はほぼ引きこもりの状態です。一応、診断は鬱と不安障害、PTSDとOCDというものですが、パニック障害、解離、感覚過敏、社交不安、広場不安、分離不安、PMDD、不眠、悪夢、実行機能障害、心気症とそれはもう色々な不安や障害がないまぜになっていて、何が診断で何が症状、障害なのかわからないくらいです。様々な療法や薬も試しましたが回復には程遠く、これからどうなるんだろうという不安と閉塞感の中、少し見えてきたものがあります。それは、これらの問題は発達障害によるものではないのか、ということです。よく「自己診断はするな」と言われるのですが、心の問題の場合、頭の中で何が起きているのかを一番知っているのは本人しかなく、科学的な検査で白黒判定できるものではないので、医師による診断も結局はかなり主観的な部分があるのではないかと思います。それに、診断そのものの目的は何かといえば有効な治療法を見つけることで、診断自体が目的ではないでしょう。発達障害ではないかと考えたのは、娘自身が精神科医に勧められて自閉症スペクトラム障害の質問票に回答してみた結果、極めて高い確率でスペクトラム障害(ASD)の可能性があるという結果になったからです。今は診断してくれる専門家を探しているところですが、これもまた、保険の問題とコロナのおかげで、待てど暮らせど返事がない状態です。自閉症の非営利団体が紹介してくれたクリニックは所得に応じて400ドル〜4000ドルの費用がかかるとのことで、しかも6-8カ月待ちだそうです。

正式な診断はまだですが、発達障害と考えると、「なるほど」と納得できることがたくさんありました。女性の場合、発達障害があっても周りに適応しようとするため発見が遅れるのだそうです。ASDの男女比は一般に4対1と言われているそうですが、実は多くの女性のASDが見過ごされてきたのはないかという議論が近年なされるようになっています。ASDでありながら周囲に適応するために無理を重ねた結果、大人になって鬱や不安障害を発症するケースがあるそうで、それを「Autistic Burnout」というそうです。日本語の定訳はまだないようですが、「自閉症燃え尽き症候群」とでもいいますか…。私の娘はずっと優等生だったのですが、そのためにどれだけ苦しい思いをしてきたのかと思うと、気づいてやれなかったことが悔やまれ、なんともやりきれない気持ちです。

ただ、発達障害かもしれないと気づいたことで、なんだか本人も私もふっきれた気がすることは確かです。特に、娘の場合はストレスが生じると「解離」といって、ときどき意識が離脱して人形のような状態になったり、その反対にパニック発作を起こしてしまうのですが、「スティミング(自己刺激行動)」という動作をすることで、そうした事がある程度防げるようになりました。「スティミング」は「反復される意味のない行動」という定義だそうですが、大いに意味があって、例えば歩き回ったり、体をゆらゆら揺らしたり、手を動かしたりすることで、かなり気が落ち着くのです。娘に言わせれば、そうした行動は周囲から奇異に思われるため、ずっと衝動を抑えていて、そこでかなりのエネルギーを消耗していたのだそうです。ASDらしきあるアメリカの俳優が「自分はずっと棚の上に自分の頭がのっかっている気がしてきた」とインタビューで言っていましたが、娘も意識と感覚が結びつかず、その気持がよくわかると言っていました。スティミングすることで、体の感覚を取り戻せる気がするということです。そして、別に人に迷惑をかけるわけでもなし、それで気が落ち着くなら人の目を気にせずやりたいだけスティミングをすればよいのだと気がついたのです。医師との診察で「座ってください」と言われても「すみません、立ってていいですか?その方が落ち着くので」と言えるようになりました。そして自宅では好きなだけクラゲ踊りのようにからだをゆらゆら揺らしています。もう「ふつう」のふりをする必要なないんだと気づいたことが、かえって私たちに希望をもたらしている気がします。山程あるいろいろな症状の根源がASDならば、焦って治そうとしないでそれに付き合える方法を考えようという一つの道筋が見えた気がするのです。

f:id:Freespirit:20201123093433j:plain

 

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ
にほんブログ村